高岡市の国宝寺院、瑞龍寺に参拝してきました。ちょっと唸りたくなるほど綺麗な場所でした。中でも特に筆者がもっとも美しいと思ったのは、「伽藍(がらん)」と呼ばれる建造物です。「計算されつくした美」を感じ取れました。この瑞龍寺に参拝する前には、ちょっとした豆知識を持って臨む事をおすすめします。豆知識が無くても楽しめますが、あるともっと楽しめると思います。
前田利長公が眠る瑞龍寺

富山県の高岡市は、加賀藩主二代目の前田利長公が築いた町です。瑞龍寺は利長公の菩提を弔うために、三代目の利常によって建立されました。寺名は利長の法名が「瑞龍院」だった事にちなんでいます。とても大きな建造物で、当時の加賀藩百二十万石の財力を誇示したものと言えます。 2021年現在も富山県唯一の国宝です。
拝観時間
9:00~16:30(冬季12/10~1/31は16:00まで)
拝観料金
- 大人:500円(団体30名以上400円)
- 中高生:200円(団体30名以上150円)
- 小学生:100円(団体30名以上70円)
※障がい者手帳、療育手帳持参で割引できます。
拝観料金が無料の日
1月1日は拝観無料です。
駐車場
瑞龍寺前の駐車場
そこそこ収納台数があるので、大きなイベントでも無い限り駐車出来ます。このコンクリート駐車場の隣にも、砂利敷きですが駐車場がありました。

筆者が駐車場に着くと、「瑞龍寺利長くんバス」を発見しました。利長くんキャラクターと瑞龍寺が描かれたバスです。これは瑞龍寺の所有物で、住職がバスを買い取って整備したそうです。要望があれば住職自ら運転して、参拝客を高岡大仏や金屋町などの観光地へ送迎してくれます。駐車場に止まっている時は、運転席にドラえもんが乗っていました。ちょっとほっこりします。
- 普通車:約100台
- バス:13台
- 駐車料金:無料
瑞龍寺から徒歩6分の駐車場
瑞龍寺の駐車場が空いていなくても、他に無料駐車できる駐車場があります。瑞龍寺正面から真っすぐ歩いて徒歩6分の所にある「八丁道第1観光駐車場」です。

- 駐車料金:無料
- 普通車:27台
瑞龍寺拝観前の豆知識・伽藍

伽藍(がらん)とは、寺院の建築物の集まりの事です。
- 「山門」「仏殿」「法堂」が南から一線上並んでいる。
- 「僧堂」と「大庫裡」が東西に配置されている。
- 「西浄」と「浴室」が山門の両側に配置されている。
この3つは伽藍の特徴ですが、全て当てはまっています。こうして見ると瑞龍寺は寺院としてとても正統に建てられた建築だなという事が分かります。
瑞龍寺の総門

拝観料を払って、最初に目にするのがこの総門です。総門は七堂の内には入りませんが、富山県の重要文化財に指定されています。
瑞龍寺の山門と金剛力士像

七堂伽藍の一つ「山門」は、俗世間との境界を表します。山門は瑞龍寺の国宝の一つです。この山門の前に広がる石庭の文様が、とても美しかったです。一糸乱れぬ石っていうのも変な表現ですが、それに近いです。2階建てで上層と下層があります。上層への出入りは禁止されていました。

下層左右には大迫力の金剛力士像が安置されています。角度によっては自分が睨みつけられているようにも感じられて、通り過ぎる時はちょっとどきどきしました。
瑞龍寺の仏殿と本尊

七堂伽藍の一つ「仏殿」は、本尊をまつる建物です。仏殿も瑞龍寺の国宝の一つです。この仏殿の屋根は鉛製の瓦で、普通の瓦より軽量の物です。富山の平均降雪量は267cmですから、こうして屋根の軽量化によって冬季の積雪に対応しています。

仏殿の中に入ると、本尊が安置されていました。瑞龍寺本尊の釈迦如来、普賢菩薩、文殊菩薩です。順路通りに裏に回れば、達磨座象と跋駄羅尊者像も安置されていました。
瑞龍寺の法堂(購買所・トイレ・茶室)

総門・山門・仏殿を経て、最後の法堂にたどり着きます。七堂伽藍の一つ「法堂」は、お経の講義をする場所です。この法堂も瑞龍寺の国宝の一つです。法堂は境内の中で最大の建造物と聞いていた通りで、確かに一番大きく見えました。

靴を脱いで中に入ると、部屋は6部屋あって内部は畳敷きでした。欄間や内陣が美しくて、大変目の保養になりました。

他の宗派と違って、禅宗では法堂に本尊を祀りません。代わりと言ってはなんですが、正面に二代藩主前田利長公の位牌が安置されていました。惜しいなと思ったのは、格子天井の絵です。天井絵は江戸時代の画家によるもので、360年前の古い物です。かなり劣化が進んでおり、説明書きを見ないと草花、野菜と判別できませんでした。天井絵は重要文化財なので、文化庁に修復申請中と聞きました。こういった歴史的な物は、なかなか文化庁の許可が下りないらしいです。

中央の隣部屋には、購買所とトイレがありました。御朱印、数珠、線香、お守り等が販売されており、なかなかにぎわっていました。

法堂の一部は茶室になっており、茶会以外の日はお抹茶を楽しめます。
- 利用日:お茶会以外毎日
- 利用時間:9時30分~15時30分
- 料金:500円(抹茶とお菓子)
※拝観の受付場所で拝観料500円が付きお抹茶券が900円で購入できます。(つまり拝観チケットとセット買えば100円引きになるという事です。)
瑞龍寺の回廊

大伽藍を囲む周囲約300mの回廊(廊下)です。瑞龍寺の重要文化財の一つです。そしてまったく曲線道がなく真っすぐに進むだけなので、体力の無い筆者でもさして疲れませんでした。

回廊を歩いている途中の窓からは、今まで見てきた山門、仏殿の裏側が見えました。
石廟(せきびょう)

法堂から出てすぐの回廊に「石廟」があります。これは国宝ではありませんが、富山県指定文化財史跡です。石廟は全部で五基。前田利長、前田利家、織田信長、信長の側室、織田信忠(信長の子)の廟です。本能寺の変の後、前田利長公が織田信長父子の分骨を迎え入れています。そこに利長父子も加えて、同じ形式の五基の廟が建造されました。
厨庫(台所)の韋駄天尊と延命地蔵
回廊途中、延命地蔵菩薩が祀られていました。そして回廊途中にある厨庫(台所)には、韋駄天尊が安置されていました。

厨庫(台所)は、供物を作ったり僧侶の食事を作ったりする所です。そこに安置された韋駄天は、お釈迦様のために食べ物を集め運んだという食の神様です。当時どれだけの僧侶が生活していたのか、厨庫には大きなかまどが三つもありました。
僧堂(修行場)と魚鼓
回廊途中、僧堂がありました。僧堂とは、僧侶が坐禅修行・睡眠・食事をする修行場の事です。この僧堂前には「魚鼓」が吊り下げられていました。魚の形をした鐘のようなもので、打ち鳴らして時刻を知らせます。木魚(もくぎょ)と同じく魚の形をしてますが、それもそのはず…魚鼓は木魚の原型です。木魚の由来としては、魚のように昼夜問わず目を開けて、寝る間を惜しんで常に修行に励みなさい、という意味が込められています。

魚はよく見ると口に丸いものをくわえています。これは煩悩珠というあぶくで、木槌で叩く事で腹から煩悩を吐き出させると言います。寺によって叩き方が異なるようですが、この魚鼓は下腹部が欠けていました。つまり瑞龍寺では下から叩いていたのかな、と思いました。
西浄(トイレ)と浴室
西浄はトイレの事、浴室はそのままお風呂の事です。瑞龍寺の回廊の一番端で、それぞれ東西に分かれています。浴室には、浴室の守護神「跋陀婆羅菩薩(ばっだばらぼさつ)象」があります。入浴時の水により悟りを開いた菩薩です。そして西浄(トイレ)には、トイレの守護神「烏蒭沙魔明王(うすさまみょうおう)像」があります。国内最大級の烏蒭沙魔明王像です。

このトイレの守護神が、瑞龍寺の参拝客の中で大人気です。2010年にヒットした植村花菜さんの名曲「トイレの神様」の人気と共に、烏枢沙摩明王が注目されました。瑞龍寺ではこの烏枢沙摩明王のお札を購入できます。ひと昔前の曲ですが、トイレの神様は本当に名曲です。
トイレの神様のお札購入方法
烏枢沙摩明王のお札購入方法は電話・申込書FAX・申込書郵送の三通りあります。申込書はhttp://www.zuiryuji.jp/apply/にアクセスするとダウンロードできます。
- 郵送の送り先 : 〒933-0863富山県高岡市関本町35
- 電話 : (0766) 22-0179
- FAX : (0766) 26-6978
- 単価 : 600円 (郵送料込)
トイレの神様のお札貼り方
- お札の貼り方:目より高い位置に貼り、お手洗いをきれいにします。
- お札の効能:不浄がはらわれ、病気平癒、安産成就、子孫繁栄などがもたらされます。
瑞龍寺前の参道・八丁道
瑞龍寺の前には、瑞龍寺と前田利長公墓所を東西に結ぶ参道があります。その距離が約八町(870m)あることから八丁道と呼ばれています。
年2回開催されるフリーマーケット

八丁道おもしろ市というフリーマーケットが、5月と10月の第三日曜日に開催されます。加賀前田家2代目利長公、3代目利常公の命日にちなんでいます。筆者も何度か行っていますが出店数は130店ほどで、わりと規模が大きいフリーマーケットです。珍しい野菜や昆布、着物の切れ端などがお値打ち価格で買えますよ。
八丁道のランチ店

糀味噌製造所「紀乃井」
左上写真の店です…かぼちゃ、さつまいも、トマトで作った味噌が購入できます。大豆すら使っていないので完全ベジタブル味噌です。高いお値段でしたが、変わり種商品が好きな人には垂涎ものです。味噌ソフトクリームはちゃんと味噌の風味がして美味しかったです。他にも味噌焼きおにぎり等が売っており、隣の無料休憩所で食べられます。
まちの駅たかおか「龍の門」
右上写真の店です…店内はまちの駅「龍の門」と食事処「清風」に分かれています。清風では懐石・精進料理が食べられます。味は大変美味しいですが待ち時間が長いです。
甘味食事処「夢参道」
左下写真の店です。…筆者お気に入りの夢参道は、レトロな小物がそこかしこに配置されていて、おしゃれなお店です。甘味は抹茶、甘酒、ぜんざいの和菓子、食事はうどんとカレーがあります。テーブル席と小上がりがあります。ただし店内はせまいので、小さい子供連れだと小物を壊しそうで入りづらいです。
食事処「やすらぎ庵」
右下写真の店です…店内は広く綺麗な庭園を見ながら食事できるので、法要や宴会に人気です。しかし味はまあまあ美味しいですが、値段の割にボリュームが少なく物足りない感じがします。筆者としてはあまりおすすめしません。
総論:高岡市の国宝寺院・瑞龍寺の魅力
瑞龍寺観光ナビhttps://www.info-toyama.com/spot/21009/
〇開門時間9:00~16:00
〇料金:大人500円、中高生200円、小学生100円
〇団体料金:30名以上は大人400円、中高生150円、小学生70円
※12月31日は「除厄の鐘」時間内も開門
※1月1日は拝観無料、人出は約3,000人
この瑞龍寺ですが国宝に指定されたのは、瑞龍寺住職方の努力あってこそです。全国の観光寺は元から門前町が整備されていたお寺がほとんどですが、瑞龍寺には門前町が無く昔は「近所の子供達の遊び場」でした。国宝指定後も行政による計画的事業がありません。それを住職と地域住民達が努力によって魅力を高めていきました。その結果ただの「近所の子供達の遊び場」だった所が国宝に指定されて、今では毎年20万人の観光客が訪れる観光地になりました。このように国宝に指定された背景を考えると自然と敬意がわいてきますね。富山県唯一の国宝というのも納得の配置美だったので、ぜひ観光におすすめです。