身体にはウイルスや細菌が入ってくると「抗体」がつくられて、外敵をやっつけようとする免疫システムがあります。その免疫システムが無害物質に対しても「有害物質」だと反応して過剰攻撃した結果、アレルギー反応が起こります。我が子の場合、生後7カ月の時にアレルギー症状が起こりました。原因は離乳食の卵白でした。
アレルゲンとは

アレルギーの原因となる物質の事を、アレルゲン(抗原)と呼びます。一般的にアレルゲンは加熱処理や消化によって構造が分解するので、抗体は反応せずに無害なタンパク質のままです。しかし不十分な加熱処理だったり、年齢や病気によって消化機能が不十分だったりするとアレルギー反応を起こす事があります。
アレルギー反応の原因
遺伝性

体質的なアレルギー素因はほぼ親から子へ遺伝します。しかし素因が遺伝するからと言ってアレルギーが発症するとは限りません。例えば周囲に花粉が無ければ、素因を持っていても花粉症が発症する事はありません。アレルギーは、「素因+周囲の環境因子」が揃う事で初めて発症します。
周囲の環境

アレルギー発症を防ぐには、アレルゲンを出来るだけ体内に進入させないような環境を整備する事が大切です。特に身体の機能が未成熟な赤ちゃんを迎える時は、ホコリ・ダニ・ペットの毛などを排する事が重要と言えます。
実際の卵アレルギー症状
食後30分後

全卵(卵黄・卵白両方)入り離乳食を食べさせた30分後に、一度嘔吐しました。しかし嘔吐後は元気な様子だったので「乳幼児によくある吐き戻しかな。」と思い、しばらく様子を見る事にしました。
食後2時間後

しばらく元気に遊んでいたので安心していたのですが、ふと我が子がずっと太ももを触っているのに気づきました。ズボンをまくって見てみると、赤い発疹がたくさんできていました。ここでようやくアレルギー反応に思い至り、子供を連れて救急に走りました。
アレルギー検査について
検査の種類
- 血液検査…採血してアレルゲンの数値を調べて、数値が高ければ原因物質に対してアレルギーの可能性があるかがわかります。
- 皮膚検査…皮膚にアレルギーの原因物質と思われるものを付着させて、反応があればアレルギーの可能性があるかがわかります。
- 負荷検査…実際に原因と思われる物質を食べさせて、アレルギーの有無を確認します。
検査の費用
- 未就学児…保険が適用されるので、完全無料です。
- 小学生以上…約2万円です。地区・年齢によっては医療費助成が適用される場合があるので、それよりも少額になるかもしれません。
アレルギー検査の結果
我が子は血液検査を受けましたが、筆者は検査前に医師にこのように確認されました。
乳幼児の血管は細く見えづらいので、採血を失敗する事もある。
採血量が多い(5ml~10ml)ので、それなりに負担がかかる。
抗体数値の高さとアレルギー症状の強さは一致しない。
んんん??!!
聞いた時はけっこう驚きました。抗体数値が高くてもアレルギー症状が出ない人、逆に抗体数値が低くてもアレルギー症状が出る人がいるそうです。つまり検査はあくまで診断の補助的役割だというのです。そんな訳で筆者は医師に何度か確認されました。要約すると「まだ小さい子供に負担を掛けて、確実性が無く失敗するかもしれないのに検査は必要なのか。」という事でした。考えた末、筆者は検査をお願いしました。採血は筆者と離れた別室で行われました。見ているのは辛いだろうという病院側の配慮でした。

我が子の血液検査の結果はクラス0~6の中で、「クラス3」という結果でした。0は陰性、1は疑い、2以上は陽性です。この数値が高いほど、アレルギー原因物質に対して多くの抗体があることを示します。数値の高さと症状の強さが一致するとは限らないとはいえ、なんとなく答えが示された気がしました。
卵アレルギーを治すため摂取スタート
卵アレルギーの主要アレルゲンは、オボムコイド・オボアルブミン・オボトランスフェリン・リゾチームです。卵のアレルゲンは加熱によってアレルゲン性が低下するので、摂取する際に重要なのは「卵の量」と「卵の加熱具合」です。
ゆで卵

最初はゆで卵の白身を耳かきひとさじ分を与えました。2週間続けても体調不良は見られなかったので、1カ月後には耳かきふたさじ分を与えるようになりました。

加熱温度を上げて加熱時間を長くするほど、卵のアレルゲン性は低下します。クミタス(kumitasu.com)サイトを参考にして、20分固ゆで卵を使いました。
全卵50g中のオボアルブミン抗原量
生卵 | 10,520mg | 100% |
温泉卵 | 9,580mg | 91.1% |
炒り卵(3分) | 980mg | 9.3% |
錦糸卵 | 84mg | 0.8% |
12分固ゆで卵 | 1.22mg | 0.01% |
20分固ゆで卵 | 0.558mg | 0.005% |
出典:クミタス(kumitasu.com)
全卵50g中のオボムコイド抗原量
生卵 | 8,495mg | 100% |
温泉卵 | 1,220mg | 14.4% |
炒り卵(3分) | 1,280mg | 15.1% |
錦糸卵 | 1,232mg | 14.5% |
12分固ゆで卵 | 1,000mg | 11.8% |
20分固ゆで卵 | 524mg | 6.1% |
出典:クミタス(kumitasu.com)
たまごボーロ

耳かきひとさじ分を3倍にしました。我が子の場合は、この段階で卵入り加工品「お菓子のボーロ」が食べられるようになりました。ボーロの卵含有量はかなり少量ですが、副材料として使われるのが小麦ではなく馬鈴薯でんぷんである事が多いので注意が必要です。卵アレルゲンのオボムコイドは、小麦粉と調理すると小麦成分と結合して溶けにくくなり、アレルゲン性が大きく低下します。対して馬鈴薯でんぷんはオボアルブミンの凝固を妨いで、オボアルブミンのアレルゲン性を低下しにくくさせます。
- 岩本製菓の丸いボーロ:卵白約0.0157g、卵黄約0.0078mg
- 大阪前田製菓の棒状ボーロ:卵白約0.26g、卵黄約0.41g

ボーロ1個 | ゆで卵1個よりも、オボアルブミンが多い |
ゆで卵1個 | ボーロ1個よりも、オボムコイドが多い |
そうは見えませんが、指先サイズのボーロ1個がゆで卵よりもオボアルブミンが多いという事です。つまり同じ卵アレルギーでも「どのアレルゲンに反応するかは人によって違う」という事を念頭に置いて、少量摂取する必要があるという事です。(オボアルブミンに反応しやすいタイプ・オボムコイドに反応しやすいタイプ・オボアルブミンとオボムコイド両方に反応するタイプがいます。)ボーロは日持ちしますし少量摂取させやすい食品ではありますが、人によってはオボアルブミンに反応しやすいかもしれないのでお気を付けください。我が子の場合は、オボアルブミンに強く反応するタイプでは無かったようで、無事に食べる事ができました。
ゆで卵の注意ポイント

我が子のように卵白アレルギーであっても、卵黄を与える時には注意が必要です。なぜなら加熱した卵白のタンパク質は、時間の経過とともに卵黄に移動するからです。下の表は固ゆで卵(12分間加熱)の卵黄1gあたりに含まれる抗原量です。下の行にいくにつれて、卵黄のアレルゲン含有量が増えているのが分かります。
オボアルブミン | オボムコイド | |
直後 | 0.0004mg | 0.011mg |
1時間 | 0.013mg | 0.38mg |
3時間 | 0.015mg | 1.6mg |
24時間 | 0.019mg | 2.8mg |
焼菓子・パン
オボアルブミン | オボムコイド | |
卵ボーロ1 | 7.0mg | 7.6mg |
卵ボーロ2 | 4.6mg | 6.5mg |
卵入りビスケット1 | 0.39mg | 0.76mg |
卵入りビスケット2 | 0.036mg | 0.014mg |
卵入りビスケット3 | 0.028mg | 0.012mg |
バターロール1 | 0.08mg | 0.130mg |
バターロール2 | 0.0011mg | 0.0052μg |
表は焼菓子・パン1g中の卵白抗原量です。我が子の場合は卵ボーロが食べられたので、卵入りビスケットとバターロールの少量摂取もスタートしました。
皮膚の保湿の重要性を語る

少量摂取を半年以上続けていたところ、我が子の卵アレルギーがずいぶん改善しました。かまぼこはほぼ完全に食べられるようになり、茶わん蒸しはスプーン3さじ食べられるようになりました。しかし日々の生活の中で、安価で栄養価の高い卵料理を作れない日々はなかなか大変でした。

人間の免疫システムを考えると、アレルギー症状が出るのは2回目にアレルゲンが身体に入った時です。つまり筆者の子供は離乳食を食べさせて初めて症状が出ましたが、もうすでにどこかからアレルゲンが身体に入って抗体ができていた状態だったという事です。人間は口から入るものは異物とみなさず、消化して取り込む力があります。しかし肌は通常入ってくる場所では無いので、肌からアレルゲンが入るとアレルギーが発症しやすくなります。皮膚からアレルゲンが入らないように、乳児・幼児の間は肌の保湿をしっかりしましょう。
総論:卵アレルギーで少量摂取する際の実際の食品量と注意ポイント
アレルギーの子供を持つと食事の用意が一層大変になりますね。身に染みて分かりました。少量摂取の様子を見るに、我が子は幸い軽度だったようです。しかしアレルギー医療革命の本にもありますが、重度のアレルギーでも治せる可能性が出てくる時代になったとはいえ、成長するほど治すのが難しくなるのがアレルギーです。ちょっと面倒でも小さいうちからの少量摂取が重要です。追記:1歳の時点でゆで卵半分が食べられるようになったので、その後順調に段階を踏みました。2歳の現在はゆで卵1個→目玉焼き(卵1個分)→玉子焼き(卵1個分)食べられるようになりました。