家族そろってウイルス性胃腸炎、通称「お腹の風邪」になりました。最初家族の中で胃腸炎になったのは子供だけでしたが、その後の筆者の知識不足による最悪な対応の数々によって、家族全員が胃腸炎にかかってしまったんです。しかも年末12月31日だったので救急センターしか開いておらず2時間待ちでした。筆者の記憶上一番最悪の大晦日を迎えた後、「もっと胃腸炎についての知識を持っておけば良かった」と大変後悔しました。
目次
感染性胃腸炎の原因となる細菌・ウイルス
発熱・嘔吐・腹痛・下痢を引き起こす感染性胃腸炎は大きく分けて、細菌性とウイルス性の二種類です。

細菌性胃腸炎(食中毒)の原因
細菌性腸炎は夏場に多い感染症で、いわゆる食中毒の事です。生または加熱不十分な肉・卵・水・まな板・手から感染します。
- サルモネラ(食肉・生卵・ペットのミドリガメ)
- カンピロバクター(鶏肉・鶏肉加工食品・レバー)
- O157などの病原性大腸菌(牛の腸内・豚の腸内)
- 黄色ブドウ球菌
- 腸管出血大腸菌(O157など)
- 腸炎ビブリオ
- ウェルシュ菌
- ボツリヌス菌
ウイルス性胃腸炎
ウイルス性胃腸炎は冬場に多い感染症で、「嘔吐下痢症」「おなかの風邪」などとも称されます。 人から人への感染・汚染された水と食品からの感染・二枚貝の生食からの感染です。人から人への感染の場合は、感染者の嘔吐物・便を処理した手から感染したケースが多いです。
- ロタウイルス
- アデノウイルス
- アストロウイル ス
- ノロウイルス
- サッポロウイルス
ウイルス性胃腸炎の嘔吐に対する失敗談

最初家族の中で胃腸炎になったのは子供だけでした。その後筆者の知識不足による最悪な対応の数々によって、家族全員が胃腸炎にかかりました。
朝、汚物処理でアルコール消毒をした
朝食中に我が子が最初の嘔吐をしたのですが、その時は嘔吐と分かりませんでした。子供本人がちっとも苦し気な様子がなく、もぐもぐ普通に食べていて食欲もありそうだったからです。「ちょっと詰め込み過ぎたのかな?」と思いつつもう一度食べさせてみると、再び嘔吐したので、ここでようやく「風邪かな?」と思いました。
- 失敗処置:胃腸炎と思わずに風邪かなと思っただけなので、丁寧にアルコール消毒で拭いただけでした。
- 正しい処置:マスクと使い捨て手袋をして、アルコール消毒ではなく塩素系漂白剤を使うべきでした。
昼、嘔吐直後に飲水させた
病院に連れて行こうとした時、「食べ物は吐いてしまうから水分だけでも取らせてあげよう」と思いました。そこで白湯を三口ほどだけ飲ませてから車に乗せました。すると車を走らせて5分で子供が嘔吐しました。

- 失敗処置:脱水を起こしたら大変だと思って、お腹が落ち着いていないのに嘔吐直後に水分を取らせました。
- 正しい処置:嘔吐直後はお腹が落ち着かないので、欲しそうに見えても飲食させずにお腹を休ませるべきでした。
夜、ゼリーとバナナを食べさせた
医者に診てもらうと、子供は胃腸炎と診断されました。
- 食べたら駄目なものは?→刺激物を避けてという事でした。
- 飲ませたら駄目なものは?→脱水症状にならないように少しずつ飲ませてあげてという事でした。
…子供を連れて行った主人が医者から聞いてきた胃腸炎対策は、一般的な風邪対策と同じようなものでした。
筆者「胃腸炎って何?どうすればいいの?」
筆者と主人は胃腸炎の知識ゼロでした。そんな中、
主人「いわゆるお腹の風邪だってさ」
という主人の言葉が知識のない脳の中にそのまま入ってきた事で、筆者は「胃腸炎とは一種の風邪なんだな」という恐ろしい認識をしてしまいました。その結果、夜の就寝中に子供が嘔吐しました。

- 失敗処置:我が家では風邪の時、好きな物・食べられる物なら何でも食べさせます。子供は熱があっても食欲があるようだったので、ゼリーとバナナを食べさせました。
- 正しい処置:
- 食べたら駄目なものは?→
刺激物を避けてという事でした。風邪の時にはゼリーとバナナくらい食べますが、胃腸炎にしては食べさせる量が多すぎました。 - 飲ませたら駄目なものは?→
脱水症状にならないように少しずつ飲ませてあげてという事でした。風邪の時のように少しずつ小まめに飲ませてしまいました。この「小まめに」が余計な事で飲ませる量が多すぎました。
夜中、汚物処理でマスク・手袋をしなかった
夜の就寝中に子供が嘔吐したので、慌てて布団を変えました。この時点でまだ胃腸炎の感染力の恐ろしさを知らない筆者と主人は、素手のまま布団を変えました。

- 失敗処置:素手で布団を新しくしました。
- 正しい処置:マスクと使い捨て手袋をしてから布団を新しくするべきでした。
夜中、嘔吐直後に飲水させた
布団を綺麗にした後、筆者は子供に水を飲ませました。…自分でも馬鹿だと思うのですが、知識のない筆者は「吐いたからには脱水症状にならないように水を飲ませなければならない。」と強く思ったのです。その結果、子供は再び嘔吐しました。

- 失敗処置:嘔吐直後に水を飲ませました。
- 正しい処置:吐き気が強い間1〜2時間くらいは無理に水分摂取しない。吐き気が収まってきたら少量ずつ飲ませます。
いや本当に何度同じ失敗しているんだ、という感じですね。
しかし言い訳させてもらうなら、「朝と昼は吐き気止め薬を飲んでいないから吐いたんだ。」と思ったんです。夜は薬を飲んだから大丈夫だと勘違いしました。そして病院からの指示も筆者的には守っているつもりでした。先生のおっしゃった「少量」というのは「本当にわずかな量」だったのでしょうが…まさか医者の方でもここまで知識のない親とは思っていなかったんだと思います。
ウイルス性胃腸炎の家族内感染
子供が嘔吐→飲水→嘔吐→飲水→嘔吐、した事でようやく筆者と主人は「今飲ませたら駄目」だという事に気が付きました。そしてスマホで「胃腸炎」を検索しました。そしてようやく今までの対応のまずさを知りました。

子供には可哀そうな事をしました。もっと早く検索すれば良かったと思います。そして今更ながら家中を消毒しましたが…忙しい年末さなか、とうとう恐れていた家族内感染が起こりました。付着した吐物を拭き取っただけでは、まだ大量のウイルスが残されますし、その手で触ったものもウイルスに汚染されています。また、汚れた服や手を洗った洗面台にもウイルスは付着します。とにかく吐しゃ物の処理方法が甘かったとしか言いようがありません。年末年始は家族そろって地獄を見ました。
一番ダメダメだった事
「胃腸炎のウイルスはアルコール消毒が効かないから塩素系漂白剤を使うべき」という超超基本的な事実を知りませんでした。
二番目にダメダメだった事
胃腸炎の感染力の強さを知らずに、使い捨て手袋とマスクを使わずに汚物処理しました。
三番目にダメダメだった事
夜中に嘔吐した子供を「もう吐き終わった」と思って抱き上げた事です。まだ吐き終わっていなかった子供に肩口で嘔吐されまして、髪にもべっちゃり吐しゃ物が付きました。ベッドから早く移動させたかったとはいえ、そのままベッドで吐かせ続けた方が幾分ましだったと思います。
感染性胃腸炎の正しい対策

感染者への対応
- 嘔吐した直後は飲んだり食べたりせずに胃腸を休め、寝かせてあげます。
- 1時間後くらいに吐き気がなくなっていれば、少量1回5㏄(スプーン1杯程度)の水分量を10~15分間隔で飲ませます。
- それでも嘔吐する場合は吐き気止めの坐薬を使って1時間後に、再び少量を飲ませてみます。
水分補給が無理そうなら、そのまま寝かせてあげた方が良い場合もあります。何故なら嘔吐の中には胃液が含まれているので、嘔吐を繰り返すと水分補給のつもりなのに反対に脱水症状が強くなるかもしれないからです。子供が欲しがっても少しだけ我慢してもらいましょう。
布団・衣服の洗濯
85℃の熱湯で1分の加熱で有効です。熱水洗濯が行え無い場合は、次亜塩素酸ナトリウム消毒が有効です。
床やドアノブへの消毒液
床やドアノブには次亜塩素酸ナトリウム0.02%の消毒液を使います。家庭用塩素系漂白剤の濃度はほとんどが5%なので、0.02%の次亜塩素酸ナトリウムを作る場合は、
- ペットボトルのキャップ2杯分の次亜塩素酸系漂白剤
- 2.5リットルの水
を混ぜて作ることができます。
ウイルスが含まれる所への消毒液
吐しゃ物・便・オムツ、おしり拭き、マスク、手袋には次亜塩素酸ナトリウム0.1%の消毒液を使います。家庭用塩素系漂白剤の濃度はほとんどが5%なので、0.1%の次亜塩素酸ナトリウムを作る場合は、
- ペットボトルのキャップ2杯分の塩素系漂白剤
- 500mlの水
を混ぜて作ることができます。
アルコール消毒が有効な病気(ウイルスと細菌)
アルコール消毒と次亜塩素酸系消毒を使い分けるのが面倒くさい。
全てのウイルスには次亜塩素酸系を使っておけば間違いないよ。
…というわけにはいきません。なぜならアルコール消毒は比較的使いやすいですが、次亜塩素酸ナトリウム消毒は使いにくいからです。
次亜塩素酸系消毒の変色例
例えば次亜塩素酸ナトリウム入りの哺乳瓶ミルクポン消毒液は、ちょっと濃度が濃いと衣類が変色します。また次亜塩素酸ナトリウム入りのキッチン泡ハイターは、そのまま使うと木が変色します。
実際に適当に薄めたミルクポンで子供服を消毒した写真です。適当に薄めるとこうなります。ノロウイルスは85℃で1分後に死滅するので、色落ちが心配なものには熱湯を使った方が良いと思います。
実際にキッチン泡ハイターを木カレンダーに吹き付けた写真です。家の床でこれをやると、取り返しがつきません。必ず使い分ける事をおすすめします。
アルコール消毒有効なエンベロープウイルスの病気
タンパク質からできている膜で覆われているエンベロープウィルスには、アルコール消毒が効きます。アルコールが膜を破壊してウイルスにダメージを与えるためです。
- インフルエンザウイルス(冬)
- RSウイルス(冬)(発熱、ひどい咳が止まらない)
- エンベロープウイルス(春)(発熱、ひどい咳が止まらない)
- 水痘帯状疱疹ウイルス(痛みのあるかゆみ、水ぶくれ)(予防接種あり)
- ヘルペスウイルス(口回りや性器にかゆみ、水ぶくれ)
- 風疹ウイルス(予防接種あり)
- B型肝炎ウイルス(予防接種あり)
- C型肝炎ウイルス(血液を介して感染)
- エイズウイルス(血液、母子、性行為で感染)
- 新型コロナウイルス(咳、くしゃみの飛沫感染、皮膚の接触感染)
アルコール消毒無効なノンエンベロープウイルスの病気
タンパク質からできている膜を持たないノンエンベロープウィルスには、アルコール消毒が効きません。
- ノロウイルス(胃腸炎になる)
- ロタウイルス(胃腸炎になる)(予防接種あり)
- エンテロウイルス(夏)(上あご奥に小さな水疱=ヘルパンギーナ)
- エンテロウイルス(夏)(手、足、口の粘膜に小さな水疱=手足口病)
- アデノウイルス(夏)(のどが痛くて目が赤くなる、目ヤニ=プール熱)
- アデノウイルス(夏)(目が充血、目ヤニ、涙=流行性角結膜炎)
- A型肝炎ウイルス(カキなどの生の魚介類、汚染水を介して感染)
アルコール消毒有効な細菌の病気
- 溶連菌(のどの痛み、発熱、普通の風邪にそっくり)
- 溶連菌(傷の上でこの菌が増えると、とびひになる)
- マイコプラズマ菌(頭痛、発熱、咳がどんどんひどくなる、長引くしつこい咳)(マイコプラズマ肺炎になる、基本的には自然治癒できる)
- 肺炎球菌(肺炎になる)(予防接種あり)
- 病原性大腸菌(腹痛、下痢、血便)(人や動物の便で感染、O-157など)
- 黄色ブドウ球菌(嘔吐、下痢)(人や動物の傷口で感染、おにぎりとか)
- 腸炎ビブリオ菌(嘔吐、下痢)(汚染された生の魚介類で感染)
- サルモネラ菌(嘔吐、下痢、発熱)(牛、豚、鶏の肉、卵で感染)
アルコール消毒無効な細菌の病気
体内に芽胞という固い殻バリアがあり、アルコール消毒が効きません。
- ウェルシュ菌(腹痛、下痢の食中毒)(スープや煮込み料理に増殖)
- セレウス菌(多くは嘔吐、腹痛、下痢)(米、小麦などの炒飯に増殖)
- ボツリヌス菌(最強の毒性を持つ、嘔吐、視覚障害、言語障害)(自家製ビン詰め、缶詰とか。あと乳児に蜂蜜)
- 虫歯菌??
総論:正しくアルコール消毒液と次亜塩素酸ナトリウム消毒液を使おう
筆者も年末胃腸炎の直後は色々買いあさりましたが、お掃除用を含めて4個ほどあれば十分です。
お掃除用
- クエン酸除菌…酸性なのでトイレの尿石・風呂の水垢に使えます。自然成分なので子供のおもちゃにも使えます。
- ファブリーズ除菌…毎日洗わないソファや布団に使います。
ウイルス用
- アルコール除菌…アルコールはすぐに蒸発して拭き取る必要がないので、布製品・包丁・まな板などのキッチン用品に使えます。
- キッチンハイター…500mlにペットボトルキャップ2杯入れて希釈します。
- キッチン泡ハイター…薄めずにそのままスプレーします。
- 哺乳瓶ミルクポン…500mlにペットボトルキャップ1杯入れて希釈します。
- 次亜塩素酸の除菌水…使い方はメーカーによります。
次亜塩素酸はメーカーによって使い方が違うので注意が必要です。
- 製品によって濃度が違うので、希釈必要な物と不要なものがあります。
- 濃度によっては吸い込むと人体に影響を与えるものもあります。
- 濃度によっては手首消毒には使えません。
―――等々です。細菌性胃腸炎(食中毒)に対しては、食肉・内臓の生食は止めて内部まで加熱する事でかなりの予防になります。しかしウイルス性胃腸炎に関しては、どんなに気を付けていても人生の中で一回以上はかかってしまう病気です。気を付けるべきは家族内感染を防ぐ事です。家族の急な嘔吐などの不測の事態に備えて、家の中に消毒液を常備しておきましょう。