前回の記事でも書きましたが、筆者は以前シロアリ駆除会社で事務員として働いていました。そんな筆者が「シロアリ駆除料金はいくらか?」の次によく聞かれた質問があります。それは「自分で駆除する事は可能なのか?」という事です。そこで今回はシロアリ駆除の方法を紹介します。
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目次
ヤマトシロアリとイエシロアリの巣の見つけ方

薬剤処理にしろ毒餌処理にしろ、まずシロアリ被害とシロアリの巣を見つける必要があります。シロアリはその種類によって巣の作り方も違いますが、大まかに分けて3タイプに分けられます。
- 自分達が食べた木材の穴に巣を作るタイプ
- 土の中に作る巣に定住タイプ
- 土の上に作る巣に定住タイプ
ヤマトシロアリの巣

- 住居の床下
- 住居の水まわり(浴室・台所・玄関)
- 住居の雨漏り場所・結露場所
- 庭の朽木
- 古いウッドデッキ
- 外に放置した段ボール
ヤマトシロアリは光と乾燥に弱く、湿気の多い環境を好みます。そして「自分達が食べた木材の穴に巣を作る」タイプです。巣を見つけるには、暗くてじめじめした湿気のたまりやすい所にある木材を探します。また水分を求めて移動するので、雨漏りや結露が酷い場合はその場所全体が巣になっている可能性もあります。雨漏りしている時は天井部から2階まで確認が必要です。
イエシロアリの巣

- 住居床下の土の中
- 敷地内にある大木の下
- 敷地外にある大木の下
- 住居のシロアリ被害部周り
イエシロアリはヤマトシロアリと同じく、光と乾燥に弱いシロアリです。ただし水分を運べるので水分を求めて移動する必要がなく、「土の中に作る巣に定住タイプ」です。女王蟻がいる本巣・エサを中継する分巣があります。本巣を見つけるには地面を探し、分巣を見つけるには被害箇所の周りを探します。本巣と被害箇所の間にある分巣は、被害箇所周辺を探すと見つけられます。しかしイエシロアリの行動範囲は本巣から半径100m近くに及ぶ場合があるので、敷地外にあると本巣を見つけるのは難しいです。
蟻塚(土の上に作る巣に定住タイプ)

材料はイエシロアリと同じく、土と排泄物を唾液で混ぜたものです。もっとも土を盛り上げて蟻塚を作るタイプは日本に生息していないので、そうそう見る事はありません。熱帯アジア・アフリカ・オーストラリア・タイなどに生息しています。
床下のシロアリ被害を確認する方法
必要な物4つ
- 光源(ヘッドライト・懐中電灯)
- 頭を保護する物(帽子・ヘルメット等)
- 顔を保護する(ゴーグル・マスク等)
- 身体を保護する分厚い作業着
床下には先端が鋭い小石や釘が落ちているかもしれませんし、シロアリやシロアリ以外の虫もいると思われます。準備品は怪我をしないために必ず必要なものです。
床下への潜り方
- 畳を外すとある床下進入口
- キッチンにある床下収納庫
二つの内のどちらでも床下に潜れます。



ここから床下に潜って確認するのですが、床下が高い家と低い家があります。上の写真のように床下が低い家の場合、自分で確認するのは難しいのでプロに頼んだ方が良いかと思います。どんなシロアリ業者でも、床下の診断・点検・見積りは無料です。
バリア工法(薬剤を土壌と木材に撒く方法)

一般的なシロアリ駆除方法のバリア工法は、土壌と木部に薬剤を撒きます。駆除金額はおよそ4000円~7000円/坪です。シロアリが巣をどこに作るタイプであってもバリア工法のやり方は同じで、次の3つの処理を行います。
- 地面に土壌用シロアリ駆除薬剤を散布する。
- 木材に木部用シロアリ駆除薬剤を散布する。
- 木材に木部用シロアリ駆除薬剤を注入する。
必要な物
- 土壌用のシロアリ駆除薬剤
- 木部用のシロアリ駆除薬剤
- 木部に穴を開けるドリル
土壌用シロアリ駆除薬剤を散布

床下の土壌からのシロアリの侵入を防ぐために、地面に土壌用薬剤を撒いてバリア層を作ります。特に重点的に薬剤を撒く所は、束の下部分、配管の立ち上がり部分です。シロアリは下から食べながら上の住居に侵入していくので、地面と住居を繋ぐ部分が危険なポイントです。(写真は「地面が土間コンクリート・床下が高め・束が鋼製束」なので、シロアリ駆除がとてもやりやすい家です。)
木部用シロアリ駆除薬剤を散布

木部からのシロアリの侵入を防ぐために、全ての土台・束柱・柱などに木部用薬剤を吹き付けて木部をバリアします。被害箇所だけでなく、 被害にあう可能性のある個所全てに吹き付けます。(写真は「地面が土間コンクリート・床下が低め・束が鋼製束」なので、床下の低さの分だけシロアリ駆除がやりにくい家です。)

被害箇所や上の写真のような蟻道(蟻の通り道)があれば、そこを重点的に薬剤散布します。
床下で木部用シロアリ駆除薬剤注入

地面と接している束、束の上で住居を乗せている大引・土台に電動ドリルで穴を開けます。穴の直径は1cm以下、穴の深さは木材の厚みの3分の2になるようにして貫通させません。(写真は「地面が砂・床下が高め・束が木製束」なので、束が木製束で被害が大きくなりやすい分シロアリ駆除が大変な家です。)

穴を開けすぎると家の強度が落ちるので、必要最小限の数(1つの柱に対して2・3カ所)だけ開けます。開けた穴に木部用シロアリ駆除薬剤を注入して、こぼれ落ちないように木栓を打ち込みます。
床上で木部用シロアリ駆除薬剤注入

被害が床上部分まで及んでいる場合は、床上のタイルや木材に穴を開けて薬剤を注入します。(写真は「地面が砂・床下が低め・束が木製束」なので床下の低さの分だけシロアリ駆除がやりにくく、束が木製束の分だけ被害が大きくなりやすい家です。)

シロアリの食害痕です。

床上の柱を食い破ってシロアリが出てくる事で、被害が発覚する例もあります。柱にも注入処理します。
意味のないシロアリ駆除例
シロアリを根絶するためには、必ず床下にもぐる必要があります。

こんな風に飛んでいる羽アリに薬を吹き付けても、意味がありません。

こんな風に木に群がる羽アリに薬を吹き付けても、意味がありません。

シロアリに食べられた木にだけ薬を吹き付けても、意味がありません。…このように床の上にいるシロアリだけに薬を撒いても何万匹といるシロアリは駆除しきれないので、必ず床下に潜って薬剤処理します。
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ベイト工法(毒餌を敷地内に配置する方法)

バリア工法が薬剤を撒いてシロアリの侵入を防ぐ方法なら、ベイト工法は毒エサを配置してシロアリの巣を全滅させる方法です。家の周りに脱皮阻害剤入りのベイト剤(毒のエサ)を設置します。これを働きアリ(職蟻)が巣に持ち帰って食べると、食べたシロアリが脱皮できなくなって巣が全滅します。ただし脱皮しない人間・動物・植物に安全なやり方ですが、「巣に持ち帰る時間」を考えると即効性はありません。
毒餌の配置場所
◎床下全般

◎被害場所

◎蟻道の近く

◎巣の近く

ベイト剤は地面に埋めたり、木材にはテープで貼り付けて固定したりします。そして半年に1度エサの減り具合をチェックして、減っていれば交換します。
ベイト工法のデメリット
ベイト剤をシロアリに食べさせて巣に持ち帰るだけ時間がかかるので、即効性がありません。効果が表れるまで約半年から1年かかります。
すでに家の柱を食い破るなど、シロアリ被害が甚大な場合は即効性のあるバリア工法をおすすめします。
シロアリの巣と通り道を把握してから設置しないと、全く効果がありません。
バリア工法の場合は全て土壌と木材に薬を撒けば問題ありませんが、ベイト工法の場合はそんな事は出来ません。
床下含む敷地全てがコンクリートの場合は、そもそも地面に埋める事が出来ません。
コンクリートに穴を開ける必要があります。
ベイト剤(毒餌)の定期チェック・定期交換が必要です。
ベイト剤が無くなると、シロアリは次に住居の木材を食べ始めます。巣が全滅するまでは常にベイト剤をチェックして満たしておくべきです。
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シロアリ被害の見落とし
バリア工法でもベイト工法でも、シロアリ被害箇所を把握する必要があります。しかしヘッドライトや懐中電灯を使うにしても床下は暗いでしょうし、虫・ネズミ・ヘビの死骸があるかもしれません。そんな環境下に慣れていない人間がシロアリ被害を把握するのは、大変難しいと思います。
コスパを考える
プロのシロアリ業者でも、30坪の家屋を一人で把握・駆除作業しようとしたらおよそ6時間以上かかります。シロアリが床下から食い進んで天井まで到達している場合は、2人で数日かかる時もあります。
熱中症の危険
床下に潜る時はどの季節でも、石や釘から身体を保護するために長袖長ズボンの分厚い作業着を着ます。作業するには数時間かかるので、これがもし夏場であれば、かなり熱中症になりやすく危険です。もし自分でシロアリ駆除をされるなら、水分や塩飴等を摂取しながらして下さいね。
総論:床下のシロアリ羽アリの巣・見つけ方と自分で駆除する方法
もしこの記事を「シロアリ駆除 自分で」というワードで検索して来られた方がおられたら、伝えたい事があります。それはシロアリ駆除はプロの業者に任せた方がぜったいにコストパフォーマンスが良いという事です。もちろんお金はかかります。自分で道具と薬剤を準備すると5万円ほどで済みますが、1階床面積25坪・料金6000円/坪としたら6000円×25坪=15万円という大金がかかります。しかし自分で駆除する場合の労力とコストを秤にかけると、10万払っても惜しくはないと筆者は思います。それでもどうしても事情があって自分でシロアリ駆除したい方は、床下に潜ったらあるかもしれない釘・鋭い石・動物の死骸・熱中症にお気をつけて作業をして下さい。